数字の入ったことわざを一般化する-ぐぐりらにっき

## はじめに
 
こんにちは、ぐぐりら(<a href="https://twitter.com/guglilac">@guglilac</a>)です。

「一石二鳥」や「百聞は一見にしかず」など、数字の入ったことわざは多いですね。

数字がベタ書きされていると気持ちが悪いので、変数に置き換えたくなりますよね。

今回はそんなハードコーディングされたことわざの中の数字部分を一般化し、その変数のとりうる値の範囲や、値の範囲によってことわざの意味がどのように変わっていくかを考察していきます。

なお、ことわざと書いていますが四字熟語も含んでいます。

なるべく複数個の数字が含まれたことわざを選ぶようにしました。

また、基本的に本記事中では$n,m$は自然数とします。

それではいってみましょう。

## 本編

【一石二鳥 → $n$石$m$鳥】

$n\lt m$だと本来の意味を損なわずに一般化できそう。

$n=m$は各個撃破のコツコツ真面目タイプという感じ。と思ったけど見方を変えると行動が成果に100%結びついているのでこれも素晴らしい。
が、一石一鳥だねと言われたらなんかディスられている気持ちになるのは自分だけ？

$n\gt m$はちょっと無駄撃ちしている感が否めないものの、通常運転はこの状態かも。

【一日千秋 →$n$日$m$秋】

一日が千年に感じられるほど人や物事の到来を待ち焦がれることを表すことわざ。

本来の意味を損なわないためには、実際の日数が体感の年数を越えなければ待ち焦がれている事になるので$n\lt 365m$が必要。

$n=365m$だと暦通りの体内時計をしていて、特に待ち焦がれている様子はありません。

$m$が約3700の状態で$n=365m$を満たしている場合、Dr.STONEの石上千空ばりの体内時計をしていることになります。

$n\gt 365m$だと時間の進むスピードがとても遅く感じられている状態。退屈な日常を送っているのかもしれません。

なお、元は一日三秋と言っていたのを強調するために一日千秋になったという話もあるので、ことわざを一般化するのもあながち間違っていないのかも...?

【一寸の虫にも五分の魂 → $n$寸の虫にも$m$分の魂】

一寸は約3cmで五分は一寸の半分(つまり十分で一寸)のようなので、

$10n \ge m$なら魂の大きさが虫の大きさを越えないので問題なく入りそうです。

これを満たしていれば本来の意味は伝わりそうですが、あまりにも$m$が小さいと魂を感じられないかもしれません。

ある程度の$m$は欲しいところです。

【二兎を追うものは一兎をも得ず→ $n$兎を追うものは$m$兎をも得ず】

まずは$m=1$に固定し、$n$を$n\ge 2$と動かしてみましょう。

この場合は元の意味を保持できていそうです。
(三兎以上も追ったら得られてしまうとすると、たくさんアプローチすればどれか一つは手に入る、みたいなことは起こり得ないということわざの原義を損なってしまいます)

残っている拡張できる方向は$n=1$と$m\gt 1$ですが、

まず$n=1$を考えると、一兎を追ってもなお一兎も得られないという、これも本来の教えと違う意味になってしまいます。

同時に色々やるのではなく、狙いを定めて一つずつアプローチしようね、という意味なのに、それでもうさぎが得られませんでしたという悲しい諺になってしまいます。

なので$n$の範囲は$n\ge 2$でよいでしょう。

最後に$m$の条件を緩和して$m\gt 1$を加えるかどうかですが、

まずあり得ない$m$の範囲として$n\lt m$があります。

追っかけていたうさぎ以上のうさぎが手に入ってしまっています。そのうさぎどこから現れた？

なので検討するなら$1 \lt m \le n$ですが、「$m$兎をも得ず」の「をも」が「〜すらも」みたいなニュアンスがあることを考えると、$m$は小さくあって欲しい感じがします。

要は「百兎を追うものは八兎をも得ず」みたいなものを許容するか、みたいな話ですが、別にいい気もするしダメな気もしてきました(急に投げやり)

面倒なのでこの辺にして次に行きます。結論は$n\ge 2, m=1$としておきましょう。

【百聞は一見にしかず→ $n$聞は$m$見にしかず】

これは100回聞いたものは一度見たものに勝てないという意味なので、

$n =100m$であれば同値と言っていいでしょう。

$n \lt 100m$だと、オリジナルのことわざのほうが成り立つならば一般化した方も成り立ちますが、同値ではありません。

「百聞は一見にしかず」 ならば「十聞は一見にしかず」は成り立ちますが、その逆は必ずしも成り立つとは限らないからです。

$n \gt 100m$だとその逆です。必要条件と十分条件みたいな話になってきました。

【朝三暮四→ 朝$n$暮$m$】

猿に木の実をあげるときに朝に三つ、夕方に四つあげるというと怒ったので朝に四つ、夕方に三つあげるというと喜んだということから、目の前の違いに囚われて結局結果が同じになること
に気づかない様、また言葉巧みに人を騙すことにも使われることわざ。

今回紹介することわざの中でトップクラスに制約がゆるい朝三暮四。
$n\ne m$であれば由来となる話が成立しそう。

$n=m$だと目の前の違いすらわからないことになってしまうので意味が変わってしまう。だいぶバカにしていて自分は好きですが。

ちなみに現在の価値と未来の価値を比べるには、未来で得られる価値を割引率で割り引いて割引現在価値に換算して比較する必要があるので、割引率によっては「朝に三つ、夕方に四つ」と「朝に四つ、夕方に三つ」は同じ価値とは言えないため、この事実に気づいていたならば由来に登場する猿は賢かったのかもしれません。

【八面六臂→ $n$面$m$臂】

1人で何人分もの活躍をすること。
元々の意味は仏像が8つの顔と6本の腕を持っていることに由来する。

$n\gt 1$かつ$m\gt 2$であれば良さげ。

一日千秋と同じように、これも三面六臂というのもあるので割と制約を満たしていればなんでもいいのかも。

【七転び八起き→ $n$転び$m$起き】

よく考えてみると七転び八起きって何かおかしい。
一度転んだら起き上がれる回数は高々一回なはずなので、7回転んで8回起き上がることは理論上不可能な気がします。

それとも、最初に起きていたという状態をカウントして「八起き」？

今回はオリジナルのことわざを尊重し、「起きている」という状態を起きカウントの定義にします。

$n+1=m$だと意味を損なわず一般化できそう。

$n=m$だとずっと$n+1$は転んでも起き上がっていましたが最後の一回だけ起き上がれなかったと言えるでしょう。

ずっと諦めずに努力してきたが最後には諦めてしまった様を表すことわざがあったっていい...!(ぺこぱ風)

$n+1\gt m$ や$n\lt m$ は理論上起こり得ないと考えていいでしょう。

【五風十雨 → $n$風$m$雨】

五日に一度風が吹き、十日に一度雨が降ると気候が穏やかで豊作の兆し、転じて世の中が平穏無事であることを意味することわざ。

これも一日千秋や八面六臂と同じパターンで既に別の数字が入ったことわざが存在します。

なんと十風五雨というのもあるらしく、雨と風の頻度が逆になっていても豊作らしい。雑なつくり。

よく書店に置いてある「〇〇は〇〇が$n$割」みたいなタイトルの本もよく本同士でコンフリクトしているが、ことわざも「結局どれが正しいんや」となってしまうものがいくつかありそう。人類は変わっていない...

というわけで豊作となる雨や風の頻度を割り出せば$n,m$の範囲を割り出せそうです。

作物の種類や季節によっても違いそうなので一般化するのは難しそうですね。
そもそも五風十雨でも十風五雨でも豊作なので、ある程度はロバストなのかもしれません。

## おわりに

バカリズムさんがやりそうなネタを書いてみました。

自分が芸人とかであれば披露する場面もあるのですが、エンジニアをやっているのでこのままお蔵入りかと思い記事にして供養しました。

面白いと思ってもらえるか、ことわざの勉強になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました！

## 参考

[ことわざ・慣用句の百科事典](https://proverb-encyclopedia.com/)

数字の入ったことわざを一般化する

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